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    いやー、凄い映画です。『別離』。
    自分でも、なぜそう思うのか。映画を観たすぐ後よりもむしろ何日か経ってからの
    感動というか「凄い映画を観た感」がますます増えて行くのは何だろうと。
    「良い」映画というより「凄い」映画という感じです。
    どうもおかしいのです。よくよく考えてみれば、ストーリー的には解りやすいし、
    ありがちな物語なんですが。
    うーむ。何だかまんまと監督さんにのせられた気分です。あまりの見事なやられ方に
    気持ち良ささえ感じずにはいられませんが。私も映画はいっぱい観ている方ですので、
    そうそうはやられたりはしないのですが。

    そういえば、パルしんの社長さんもご覧になられた時「間違いなく今年のベストや」と
    おっしゃっていました。年間250本も映画を観る社長さんにその言葉を言わしめたの
    ですからやはり凄い映画です。

    賞をとっても、わかるように、米アカデミー賞の外国語映画賞はモチロン、
    ゴールデン・グローブ賞も、そしてベルリン映画祭では最高賞の金熊賞と
    主要3部門独占全5部門受賞は史上初だそうです。
    女性キャスト全員に女優賞、男性キャスト全員に男優賞を出したそうです。
    現段階で世界中の映画賞を90個(!)も穫っているそうです。スゲー。

    この映画は歴史に残る名作になるのではないかと私も思います。
    久しぶりに非の打ち所のない映画を観たという感じです。とってもゆたかで深い。
    前作『彼女が消えた浜辺』もそうですが、特に『別離』は前作より解りやすくなって
    いるのは、監督には欧米に、いや世界に「イラン文化」を伝えようと言う使命感の
    ようなものがあるのだと思う。「イスラム」といえば「テロ」にしか結び付けれない
    アメリカの、いや日本の、マスゴミにもの申しているのだ。

    オープニングの「光」から始まるのは前作『彼女が消えた浜辺』も同じでした。
    前作は喜捨ポストの内側からの「光」で始まり、今回もコピー機の内側からの「光」
    からのオープニング。とてもカッコイイ。スタイリッシュですね。
    で、物語が始まると、もう息もつけない言葉の応酬。それで最後まで引き込まれて
    止まりません。やはり脚本家として定評のあるファルハディさんのストーリーテリング
    の勝利でしょうか、それとも出演者の演技の凄さでしょうか。
    前作同様、キーワードは「嘘」。しかし単なる嘘ではないのが、この監督の巧さです。
    あらゆるものをも内包した嘘とでも言いましょうか、社会・環境・スタンス・文化・
    タイミング・宗教・生活、あらゆるものです。そこがこの映画の深さなのでしょう。
    単なる「嘘つき」たちの話ではなく、何故嘘をついたのか、つかなくてはならな
    かったのか、そこが一番の問題なのであり、一番の厄介な事なのである。
    誰も恨めない、誰のせいにも出来ない。ハリウッド映画と違って、すべての登場人物
    に悪モンもえーモンも出て来ない。ただ日常生活があるだけなのだ。
    善かれと思ってとった行動が小さな「嘘」をうみ、物語はどんどんどんどん
    悪い方へ進んで行く。このへんは昔のケン・ローチさんに語り口が似ていますね。
    脚本に穴がなく、突っ込みどころがないので、そうなってしまったら、自分でも
    嘘をついてしまうだろうと思ってしまう。
    そして最後まで解決しない。そうなのだ。「解決」というのは各々の胸の内で
    決着をつけるということなのだ。
    そういう意味では、この映画ほどスッキリしない映画はないのではないか。
    映画館を出た後には、もやもやが残るだろう。とりわけハリウッド映画に慣れて
    いる方には、悪モンが出て来ないので、どちら側へも加担できなくて、
    重たく嫌な気持ちになるのかもしれない。しかし世の中だいたいのトラブルは、
    「善悪」ではなくて「意見の違い(良しとするモノの違い)」ではないだろうか。
    「どちらの意見も正しい」というのが一番厄介なのだ。

    エンディングのピアノの響きがとても哀しく美しい。

    Women's Action Networkのサイトでは以下のように書かれていました。
    一人でも多くの人がこの傑作を観に映画館に行くことを願ってやみません。
    DVDでは決してこの映画の息をのむようなサスペンスフルな演出と思いがけない
    展開の連続、現代的な演出の素晴らしさは味わえないと思います。

    まだご覧になっていない方は6月1日まで元町映画館で上映中です。
    今年観なければいけない3本には確実に入ると思われますので、是非どうぞ。
    むしろハリウッド映画ばかり観ている方にこそ観てほしい映画だと私は思います。


    追記:
    遅ればせながら今年1月に亡くなられたテオ・アンゲロプロスさんに追悼の意を
    表しまして「追悼 テオ・アンゲロプロス」として7月から特集上映いたします。
    やっぱり元町映画館が上映しないとね。
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